ゴッサムシティに巣食う悪人が2人…1人は犯罪こそが最高のジョーク、悪こそ人間の究極の姿と言うジョーカー、そして1人は、警官でもないのに悪人をリンチするバットマンと言う謎の男…
バットマンの為に犯罪がしにくくなり、更にハービー・デントと言う正義を貫く地方検事の出現が追い討ちとなり、犯罪者はバットマンを殺す計画を立てる。
そしてジョーカーは、バットマンが正体を明かさなければ、市民を殺していくと公言し実行していく…
【評】
前作から名作だと言われているバットマンですが、私は個人的にはあんまり好きじゃないです。
バットマンと言う、本来は正義の味方、ヒーローであるはずの存在が、その存在があるが為、罪も無い市民が犠牲になっていき、その遺族たちがバットマンを恨む…それって平成のガメラシリーズに通じるところがありますね。ガメラは人の為に怪獣と戦ってくれるのに、そのガメラに家を押しつぶされて親を亡くし、ガメラを恨む人々…そっくりの設定です。で、それはそれで納得なんですけれど、それを取り巻く設定に無理がありすぎるような気がします。
バットマンは高潔な精神の持ち主で、いくら悪だとしても自分の手は下さない。それはそれで良いのですが、一般的警察官はどうなのでしょう。ジョーカー1人のためにどれだけの被害があったのか、そして捕まえても巧妙に逃げるジョーカーを殺せずにいるのはバットマンだけではなく、警察官も一緒なの? ここまで被害をもたらす犯人に対して、警察は「見つけ次第射殺」と言う選択肢を持たないのでしょうか。
バットマンがバットマンとなると考えた時、またバットマンとして活躍をしている時、大を救うため小を犠牲にするのか、どちらか1つの選択しかない時、どちらを救うのか悩むことでしょう。その悩みが今ひとつ表現されていないのが不自然と感じます。もしかして、それは次回作以降の課題なのでしょうか…
どんな手もやりたい放題の「悪」に対し、手かせ足かせの「正義」にイライラします。本当にこれは理屈に合っていることなのでしょうか。そのイライラ感が自分で整理できないため、この映画が素直に面白いとは言えないのです。
ただ、この映画の根底に流れることはとても単純で面白く考えさせられます。つまり…
人間が動物と違う為には…と言う問いがあります。「ジョークが理解できる」とか「言葉を話す」とか言われますが、どれも高等動物には存在するらしいことがわかってきているので、では、人間が人間として、動物と一線を画すところはどこなの?と言うと、それは高度な社会形成と言う答えに行き着くのでしょうか。暴力での秩序ではなく、悪く言えば屁理屈の上に成り立った「正義」の秩序で社会を形成していることが動物と違う…格好をつけて言うとそうなのかもしれませんが、その実、その社会の裏には動物並みで、人間としての教育を受け入れず、本能のまま生きることしか出来ないやつ「悪」がいる。そして、人間が人間たるには相当の努力がいるけれど、悪に落ちるのは簡単なことだと映画で言いたいのでしょう。でも、余りにも安易で、象徴的過ぎるんじゃないのかなぁ…で、実際には、動物は同属同士の殺し合いはしません。縄張り争いなどで争うことはあっても、合図をしたらそれ以上の攻撃はしないし、人間社会で言う「悪」の存在は動物社会にはありません。と言うことは、人間は動物以下なのかもしれませんし、「悪」こそが人間が人間たる、動物と違う象徴(シンボル)なのかもしれません。
そんな事を訴えているのかな?と思いつつ、それをどこまでどのようにして表現するのかは興味深いんですけれど、そのストーリー展開が下手な日本のドラマみたいで不自然なのでのりが今ひとつというのが残念でなりません。
個人的には、その昔少年画報と言う雑誌に連載されていた頃から、バットマンは好きでした。そのバットマンが単純なヒーローではなくなったのが自分には残念でならないと言う気持ちもあるのかもしれません。
兎に角究極の「悪」と「正義」のぶつかり合いを描こうとしているがために、それを実現するための設定が中途半端で説得力がなくなっているのが残念。
そんな訳で、映画が持って行きたい(訴えたい)ところには共感できることはあるけれど、イライラ感が災いして、☆2つってところにしておきます。
余談ですが、例によって映画の情報って事前に何にも手に入れていないのですが、この映画を見るまで「The Dark Night」だと思っていました。夜が暗いのは当たり前じゃんと思っていたんですけれど、「The Dark Knight」なんですね。うん、納得です。でも、カタカナにしたら区別つかないので、もう少し分かり易くして欲しいものです。
公式サイト:
http://wwws.warnerbros.co.jp/thedarkknight/
posted by lunatic at 21:45|
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☆☆★★★(びみょー)
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